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東京家庭裁判所 昭和60年(家)2301号 審判

申立人 北山良秀

相手方 北山義郎 外4名

被相続人 北山政之助

北山タミ

主文

1  被相続人西山伊之助及び被相続人北山タミの各遺産を次のとおり分割する。

(1)  別紙第1遺産目録1記載の遺産は、相手方北山信郎及び相手方北山忠郎の共有取得とし、その持分は、各2分の1とする。

(2)  同目録2及び3記載の各遺産は、申立人の取得とする。

(3)  同目録4及び5記載の各遺産は、申立人及び相手方北山由基子の共有取得とし、その持分は、いずれも申立人3分の1、相手方北山由基子3分の2とする。

(4)  同目録6及び7記載の各遺産は、相手方北山鉄雄の取得とする。

(5)  同目録8及び10記載の各遺産は、相手方西山忠郎の取得とする。

(6)  同目録9並びに別紙第2遺産目録1及び2記載の各遺産は、相手方北山信郎の取得とする。

2  上記の遺産取得の代償として、

(1)  申立人は、相手方北山信郎に対し金183万2,561円、相手方北山忠郎に対し金182万9,980円を、

(2)  相手方北山由基子は、相手方北山鉄雄に対し金228万4,359円、相手方北山忠郎に対し金301万5,921円を、

いずれも本審判確定の日から6箇月以内に支払うこと。

3  鑑定人○○○に支給した手続費用金135万円は、相手方北山義郎を除く各当事者の平等負担とする。

相手方北山義郎を除く各相手方は、申立人に対し、手続費用の償還として各自金27万円を支払うこと。

理由

一件記録に基づく当裁判所の事実認定及び法律判断の要旨は、以下のとおりである。

1  相続の開始、相続人及び法定相続分

(1)  被相続人北山政之助(以下「被相続人政之助」という。)は、昭和47年11月19日死亡し、相続が開始した。その相続人は、被相続人政之助の妻である被相続人北山タミ(以下原則として「被相続人タミ」という。)並びにその子である申立人及び相手方北山義郎(以下「相手方義郎」という。その余の相手方についても、同様に名のみによる略称を使用する。)ら相手方5名である。各人の法定相続分は、被相続人タミが3分の1、申立人及び相手方が9分の1である。

(2)  被相続人タミは、昭和54年9月18日死亡し、相続が開始した。その相続人は、子である申立人及び相手方義郎ら相手方5名であり、その法定相続分は、各6分の1である。

(3)  ところで、相手方義郎は、かねてより、本件の遺産分割には一切かかわりたくなく、また、遺産の取得も希望しない旨の意向を表明しているところであつて、東京家庭裁判所における調停及び審判にもほとんど出頭していない。同人は民法915条の熟慮期間内に正式の相続の放棄をしているわけではないが、遺産に対する共有持分権を放棄しているものと見ることができる(なお、同人が特定の者に対して相続分の譲渡をしたという事実は認められない。)から、本件においては、あたかも同人が初めから相続人とならなかつた場合のように、同人の法定相続分を零として遺産分割の審判をするのが相当である。

したがつて、本件の審判においては、申立人及び相手方は、被相続人政之助の遺産分割の関係では各15分の2、被相続人タミの遺産分割の関係では各5分の1の法定相続分を有するものと扱うことになる。

2  遺産分割協議の成否

相手方信郎は、被相続人政之助の遺産については、昭和48年2月26日に相続人間で遺産分割の協議が成立した旨主張するので、この点につき検討する。

一件記録、特に相手方義郎に対する審問の結果によれば、相手方信郎の主張する日時に本件の申立人及び相手方6名並びに北山タミが集まり、被相続人政之助の遺産の分割について協議を行つたこと、その結果、遺産の分配方法を取り決めること、北山タミの面倒を見ることなどにつき相手方信郎に一任することを全員が了承し(なお、この段階で、すべての遺産を相手方信郎が取得する旨の合意が成立し、あるいは、全相続人から相手方信郎に対して相続分の譲渡がなされたとまでは認め難い。)、白紙に署名押印したこと、申立人は、当初はこれに反対していたが、最終的には署名押印に応じたこと、しかし、申立人は、後日、右の文書の署名部分を破り取り、相手方信郎に一任する旨の意向を撤回したこと、その段階では、遺産の分配方法もいまだ明確な形で決められてはいなかつたことを認めることができる。

以上の事実によれば、遺産分割の協議は、相手方信郎が委任に基づき具体的な遺産の分配方法を取り決めた上、改めて各相続人の了解を得た時点で成立に至るものと解されるところ、申立人はそれ以前に上記の委任自体を撤回しているのであるから、法的には、本件ではいまだ遺産分割の協議は成立していないものといわざるを得ない。

3  遺産の範囲及び価額

(1)  被相続人政之助の遺産であつて本件審判時に現存するものは、別紙第1遺産目録1ないし8に記載のとおりであると認められ、この認定を左右するに足る証拠はない。

そして、この遺産の分割時における価額(昭和60年8月10日の鑑定時の価額と同額と扱う。)は、同目録の「分割時価額」欄に記載のとおりであるが、鑑定人○○○作成の不動産鑑定評価書及び補充鑑定評価書における鑑定評価額と異なつた価額を採用した遺産とその理由は、次のとおりである。

まず、1の宅地については、地上に相手方信郎所有の建物(第三者に賃貸中)が存在し、同人が使用借権を有しているが、後述のように、この宅地は相手方信郎及び相手方忠郎に共有取得させるので、これについては全体として自己使用を前提とした更地価格による評価をするのが相当である。したがつて、1の宅地については、その更地価格7,502万8,000円から借家権価格10パーセントのみを控除した6,752万5,000円(1,000円未満切捨)をもつて分割時における価額と認める。

次に、4の借地権及び5の建物については、被相続人政之助の死亡の前後から今日まで相手方忠郎が法的な占有権原に基づかずにこれを占有使用してきているので、借地権と建物の価格の合計額3,638万円から明渡費用として10パーセントを控除した3,274万2,000円をもつて分割時における価額と認める。

(2)  次に、別紙第1遺産目録9及び10に記載の賃料及び自己使用収益は、それぞれ同目録3及び5の遺産の相続開始後の果実であつて、被相続人政之助の本来の遺産には属さないが、本件においては、その遺産と併せて清算することが相当である。

すなわち、相手方信郎は、被相続人政之助の死亡以来、同目録2及び3の遺産を収益・管理しており、同目録3の建物の賃料を取得するとともに、公租公課を負担し、また同目録2の借地権の名義を変更した上、地代の支払いを行つている。同人の使用収益は、被相続人政之助との間の使用貸借契約等の法的な権原に基づくものとは認められないから、少なくとも同目録3の建物の賃料から公租公課、地代その他の管理費用を除いた分は、同遺産の果実として、共同相続人間で分配すべきものである。そして、その分配・清算は、本来は民事訴訟手続の中で行われるべきものであるが、本件の当事者間にはこれを遺産分割手続の中で清算することに特に異論が見られるわけではなく、また、相続開始後既に十数年を経たこの段階で別途に訴訟により解決すべきものとすることは、結局、紛争の全体的な解決がなされず、共同相続人間の公平が実現されないことになる可能性が極めて強くて相当ではない。

他方、相手方忠郎は、前記のように、被相続人政之助の死亡の前後から、同目録4及び5の遺産を収益・管理しており、同目録5の建物に居住するとともに、公租公課を負担し、また、同目録4の借地権の名義を変更した上、地代の支払いを行つている。同人についても、その使用収益が法的な権原に基づくものとは認められないから、少なくとも同目録5の建物の自己使用収益(賃料相当額)から管理費用を除いた分は、同様に、同遺産の果実として本件遺産分割手続の中で清算するのが相当と考えられる。

そして、同目録3の建物の賃料から管理費用を除いた額のこれまでの合計は、被相続人タミの入院費用等に充てられた分を差し引いたとしても、600万円を下回ることはないと認められるので(鑑定人○○○作成の不動産鑑定評価書参照。ただし、家賃の額は平均月11万円を下らないものと推認される。)、同額をもつて本件遺産分割の対象とするのが相当である。また、同目録5の建物の自己使用収益から管理費用を除いた額のこれまでの合計は、500万円を下回ることはないと認められるので(○○○に対する審問の結果参照)、同額をもつて本件遺産分割の対象とするのが相当である。

(3)  被相続人タミの遺産としては、後記の被相続人政之助の遺産の相続分のほか、別紙第2遺産目録1及び2に記載の預金が現存しているものと認められ、その分割時における価額(昭和60年10月24日の銀行の調査時の価額と同額と扱う。)は、同目録の「分割時価額」欄に記載のとおりである。なお、相続開始後の果実(利息)については、本件の当事者間にはこれを遺産分割手続の中で清算することに特に異論が見られないこと等から、本件遺産分割の対象に含めることとする。

4  寄与分

(1)  相手方信郎は高校を卒業した昭和26年ころから昭和39年ないし昭和40年ころまで、相手方忠郎は中学校時代の昭和25年ころから昭和39年ころまで、いずれも被相続人政之助を手伝つて家業である左官業に従事し、この間、給料のような形で労働の対価を得てはおらず、生活費を負担してもらつていたほかは、小遣い銭程度をもらつていたものと認められる。この相手方両名の被相続人政之助に対する貢献の態様、期間等に照らすと、この相手方両名については、被相続人政之助の遺産の維持への寄与があつたものと評価すべきであり、その寄与分はそれぞれ遺産の10パーセントと見るのが相当である。

(2)  一方、申立人も被相続人政之助の遺産の維持・増加に寄与した旨主張しているが、申立人については、紛争の仲裁に入るなど、個々的に被相続人政之助のために助力、貢献をした事実があつたことはうかがわれるものの、これをもつて法定相続分を修正するに足る寄与があつたということは困難である。

(3)  被相続人タミの関係では、遺産の維持・増加に寄与した相続人がいると認めるに足る証拠はない。この点に関し、相手方信郎は、被相続人政之助の死亡後、被相続人タミが死亡するまで数年間、その面倒を見て療養看護に当たつてきた事実が認められるところであり、この関係での相手方信郎の労苦のほどは察し得ないわけではない。しかしながら、一件記録上、被相続人タミの入院費用等については別紙第1遺産目録3に記載の建物の賃料などで賄つていたことがうかがわれ、そのほか、相手方信郎が被相続人タミの遺産の維持・増加という面で特別の寄与をしたとまで認めるに足る証拠はない。

5  特別受益

(1)  相手方義郎を除く相続人の中で被相続人政之助からその生前に生計の資本としての贈与を受けた者、受益財産及びその相続開始時の価額は、別紙第1特別受益財産目録に記載のとおりであると認められる。当事者の中には、これと異なつた主張をする者もあるが、一件記録中にはこの認定を左右するに足る証拠は存しない。なお、鑑定人○○○作成の不動産鑑定評価書及び補充鑑定評価書における鑑定評価額と異なつた価額を採用した受益財産とその理由は、次のとおりである。

まず、同目録3については、一件記録中の資料によれば、生前贈与の対象は、「受益財産」欄に記載の土地の所有権ではなく、借地権であると認められるので、鑑定評価額1,452万円にこの地域の借地権割合として適当と認められる0.7を乗じたものに、更に所定の時点修正を加えた377万2,000円(1,000円未満切捨)をもつて、受益財産の相続開始時における価額と認める。

同目録4については、一件記録中の資料によれば、生前贈与の対象は「受益財産」欄に記載の土地の購入資金の2分の1程度であると認めるのが相当と判断されるところ、当時における実際の贈与の金額は明らかではないので、相続開始の時点における上記の土地の価額の2分の1をもつて、贈与の金額を相続開始の時点の貨幣価値に換算した価額と認める。

同目録6については、相手方忠郎は受益財産である建物の敷地につき使用借権を取得していると認められるので、建物価額(62万5,000円)と使用借権価額(604万5,000円)から2パーセントを減額したものに、更に所定の時点修正を加えた合計額287万2,000円(1,000円未満切捨)をもつて、受益財産の相続開始時における価額と認める。

同目録7については、「受益財産」欄に記載の土地全体の価額の2分の1である471万9,000円(1,000円未満切捨)をもつて、受益財産の価額と認める。なお、同財産は、昭和40年に被相続人政之助から相手方由基子に贈与されたものであるが、昭和48年2月26日付けの売買をもつて相手方由基子から同じく2分の1の共有持分を有していた相手方鉄雄に持分が移転し、いまだその代金の決済が終了していないことがうかがわれる。そうすると、実質的に利益を得ているのは相手方鉄雄ということになるが、同人を被相続人政之助の相続の関係で上記の財産の受益者と扱うことは困難であり、売買の決済は本件の遺産分割とは別個に行うほかはない(もつとも、この審判により相手方由基子が負担することとなつた代償金債務との間で相殺をすることは可能であろう。)。

(2)  次に、相手方義郎を除く相続人の中で被相続人タミからその生前に生計の資本としての贈与を受け、あるいは、遺贈を受けた者、受益財産及びその相続開始時の価額は、別紙第2特別受益財産目録に記載のとおりであると認められ、この認定を左右するに足る証拠はない(第1特別受益財産目録2の借地上の建物(鑑定符号E2)は、一件記録中の資料では、いまだ相手方信郎が生前贈与により取得したと認定するには足りない。)。

6  具体的相続分(被相続人政之助関係)

(1)  みなし相続財産の価額

被相続人政之助の遺産の相続開始時(昭和47年11月19日)における価額は、別紙第1遺産目録の「相続開始時価額」欄に記載のとおりであると認められ(前記のように、分割時価額につき鑑定評価額と異なつた価額を採用した同目録1、4及び5については、鑑定と同様の計算方法により、時点修正を行つた。)、その合計額は、6,242万8,000円となる。

これから、相手方信郎及び相手方忠郎の寄与分相当額合計1,248万4,000円(各624万2,000円。1,000円未満切捨)を差し引くと、残額は、4,994万4,000円となる。

そして、被相続人政之助関係の特別受益財産の相続開始時における価額の合計は、3,015万1,000円であるから、これに上記の4,994万4,000円を加えたみなし相続財産の価額は、8,009万5,000円となる。

(2)  相続開始時における相続分

そこで、被相続人政之助についての相続開始時における各相続人の相続分を算定すると、次のとおりである。

〈1〉  被相続人タミ

8,009万5,000円×1/3 = 2,669万8,000円(1,000円未満四捨五入。以下この項において同じ)

〈2〉 申立人

8,009万5,000円×2/15-620万5,000円(特別受益額) = 447万4,000円

〈3〉 相手方鉄雄

8,009万5,000円×2/15 = 1,067万9,000円

〈4〉 相手方信郎

8,009万5,000円×2/15+624万2,000円(寄与分相当額)-1,042万1,000円(特別受益合計額) = 650万円

〈5〉 相手方忠郎

8,009万5,000円×2/15+624万2,000円(寄与分相当額)-880万6,000円(特別受益合計額) = 811万5,000円

〈6〉 相手方由基子

8,009万5,000円×2/15-471万9,000円(特別受益額) = 596万円

(3) 遺産分割時における相続分

被相続人政之助の遺産の分割時における価額の合計は、1億7,311万4,000円である。これに(2)の相続開始時における相続分の割合(分母は、各相続人の相続分を合計した6,242万6,000円とする。)を乗じて、遺産分割時における各相続人の相続分を算定すると、次のとおりである。なお、被相続人タミが生存していたならば取得したであろう相続分は、後に、同人の遺産として改めて分割する扱いをすることとなる。

〈1〉  被相続人タミ

1億7,311万4,000円×2,669万8,000円/6,242万6,000円 = 7,403万6,420円(小数点以下四捨五入。以下、この項において同じ)

〈2〉  申立人

1億7,311万4,000円×447万4,000円/6,242万6,000円 = 1,240万6,882円

〈3〉  相手方鉄雄

1億7,311万4,000円×1,067万9,000円/6,242万6,000円 = 2,961万4,013円

〈4〉  相手方信郎

1億7,311万4,000円×650万円/6,242万6,000円 = 1,802万5,198円

〈5〉相手方忠郎

1億7,311万4,000円×811万5,000円/6,242万6,000円 = 2,250万3,766円

〈6〉  相手方由基子

1億7,311万4,000円×596万円/6,242万6,000円 = 1,652万7,720円

7  具体的相続分(被相続人タミ関係)

(1)  みなし相続財産の価額

被相続人タミの遺産の相続開始時(昭和54年9月18日)における価額は、被相続人政之助の遺産の相続分については前記6の(2)の〈1〉の2,669万8,000円であり(被相続人政之助の相続開始時における価額と同額として扱う。)、別紙第2遺産目録記載の遺産についてはその「相続開始時価額」欄に記載のとおりであつて(分割時価額と同額として扱う。)、その合計額は、3,078万2,000円(1,000円未満切捨)となる。

そして、被相続人タミ関係の特別受益財産の相続開始時における価額の合計は、5,028万円であるから、これに上記の遺産の合計額を加えたみなし相続財産の価額は、8,106万2,000円となる。

(2)  相続開始時における相続分

そこで、被相続人タミについての相続開始時における各相続人の相続分を算定すると、次のとおりである。

〈1〉  申立人

8,106万2,000円×1/5 = 1,621万2,000円(1,000円未満四捨五入。以下、この項において同じ)

〈2〉 相手方鉄雄

8,106万2,000円×1/5-1,524万円(特別受益合計額) = 97万2,000円

〈3〉 相手方信郎

〈1〉に同じ

〈4〉 相手方忠郎

8,106万2,000円×1/5-381万円(特別受益合計額) = 1,240万2,000円

〈5〉 相手方由基子

8,106万2,000円×1/5-3,123万円(特別受益合計額)

= -1,501万8,000円

相手方由基子については、自己の本来的相続分を1、501万8,000円超える特別受益を得ているが、この超過分は他の相続人が上記の具体的相続分の割合(なお、他の相続人の具体的相続分の合計額は、4,579万8,000円である。)で負担すべきであると解される。そうすると、各人の負担分は、次のようになる。

〈1〉  申立人

1,501万8,000円×1,621万2,000円/4,579万81000円 = 531万6,000円

〈2〉 相手方鉄雄

1,501万8,000円×97万2,000円/4,579万8,000円 = 31万9,000円

〈3〉 相手方信郎

〈1〉に同じ

〈4〉 相手方忠郎

1,501万8,000円×1,240万2,000円/4,579万8,000円 = 406万7,000円

前記の具体的相続分からこの負担分を差し引くと、結局、相続開始時における各相続人の相続分は、次のようになる。

〈1〉  申立人   1,089万6,000円

〈2〉  相手方鉄雄    65万3,000円

〈3〉  相手方信郎 1,089万6,000円

〈4〉  相手方忠郎   833万5,000円

〈5〉  相手方由基子          0

(3) 遺産分割時における相続分

被相続人タミの遺産の分割時における価額は、被相続人政之助の遺産の相続分については前記6の(3)の〈1〉の7,403万6,420円であり、別紙第2遺産目録記載の遺産についてはその「分割時価額」欄に記載のとおりであつて、その合計額は、7,812万1,134円となる。これに(2)の相続開始時における相続分の割合(分母は、各相続人の相続分を合計した3,078万円とする。)を乗じて、遺産分割時における各相続人の相続分を算定すると、次のとおりである。

〈1〉  申立人

7,812万1,134円×1,089万6,000円/3,078万円 = 2,765万4,577円(小数点以下四捨五入。以下、この項において同じ)

〈2〉  相手方鉄雄

7,812万1,134円×65万3,000円/3,078万円 = 165万7,346円

〈3〉  相手方信郎

〈1〉に同じ

〈4〉  相手方忠郎

7,812万1,134円×833万5,000円/3,078万円 = 2,115万4,635円

〈5〉  相手方由基子

0(相続分なし)

8 遺産の分割方法

(1)  各相続人の具体的相続分の合計額

上記6及び7において示した各相続人の遺産分割時における相続分の合計額は、次のとおりである。

〈1〉  申立人    4,006万1,459円

〈2〉  相手方鉄雄  3,127万1,359円

〈3〉  相手方信郎  4,567万9,775円

〈4〉  相手方忠郎  4,365万8,401円

〈5〉  相手方由基子 1,652万7,720円

(2) 別紙遺産目録記載の遺産の分割

一件記録に現れている遺産の種類、性質、利用の状況及び経緯、各相続人の生活状況、代償金支払能力及び分割方法についての希望、その他一切の事情を総合すると、別紙第1遺産目録記載の遺産は、次のように分割するのが相当である。

まず、9及び10については、それぞれ事実上これらの利益を得ている相手方信郎及び相手方忠郎に取得させるべきことは明らかである。

そして、1については、その利用状況、価額等に照らし、相手方信郎及び相手方忠郎に持分2分の1ずつの割合で共有取得させるのが相当である。

2及び3については、その価額、分割の希望等に照らし、申立人に取得させるのが相当である(なお、地主に支払つた名義変更料は、遺産分割手続とは別に清算すべきものである。)。

4及び5並びに6及び7については、その価額、各相続人の代償金支払能力、その他諸般の事情を考慮し、結局、4及び5を申立人及び相手方由基子にそれぞれ持分3分の1と3分の2の割合により(準)共有取得させ、6及び7を相手方鉄雄に取得させることとする。

そのほか、8については、相手方忠郎に取得させることとする。

次に、別紙第2遺産目録記載の遺産については、主に上記の別紙第1遺産目録記載の遺産の分割状況と各相続人の具体的相続分の関係を考慮し、いずれも相手方信郎に取得させることとする(なお、この関係で分割時と扱つた昭和60年10月24日以降に発生した利息は、本件の審判時点までの分も含めて相手方信郎の取得となる。)。

(3) 遺産分割に伴う代償金の額

(1)による各相続人の具体的相続分と(2)の遺産の分割により各相続人の取得する財産の価額との差額は、次のとおりである。

〈1〉  申立人

4,006万1,459円-(3,281万円+3,274万2,000円 = 1/3) = -366万2,541円

〈2〉 相手方鉄雄

3,127万1,359円-2,898万7,000円 = 228万4,359円

〈3〉 相手方信郎

4,567万9,775円-(6,752万5,000円×1/2+600万円+108万4,714円+300万円) = 183万2,561円

〈4〉 相手方忠郎

4,365万8,401円-(6,752万5,000円×1/2+5万円+500万円) = 484万5,901円)

〈5〉 相手方由基子

1,652万7,720円-(3,274万2,000円×2/3) = -530万0,280円

そこで、これを調整するため、申立人については、相手方信郎に対し183万2,561円、相手方忠郎に対し182万9,980円の各代償金債務を負わせ、また、相手方由基子については、相手方鉄雄に対し228万4,359円、相手方忠郎に対し301万5,921円の各代償金債務を負わせることとし、その支払時期については、金額等を考慮し、いずれも本審判確定の日から6箇月以内とする。

9 手続費用

鑑定人○○○に支給した手続費用金135万円については、相手方義郎を除く各当事者の平等負担とするのが相当である。したがつて相手方義郎を除く各相手方は、上記金135万円を予納した申立人に対し、手続費用の償還として各自金27万円を支払うべきである。

10 よつて、当裁判所は、参与員○○○○の意見を聴いた上、主文のとおり審判する。

(家事審判官 河邉義典)

別紙目録〈省略〉

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